「一生、お金に困らないで、充実した人生をまっとうしたい。」
誰しもが願うことでしょう。
でも、そのために必要なお金って、いったいどのぐらいあればいいのでしょう。よくわかりませんよね。
「そもそもお金とはなにか?」
「人が生涯に必要とする金額とその理由は?」
とか問われても、なかなか正解が見出し難いことも多いです。
ちなみに前者に対する私の答えは、
「お金は使ってナンボ、あなたが使い方を決めるもの」。
後者への答えは
「一人ひとりに幸せの定義は違っても、その人の幸せに必要な金額が、その人の幸せのために必要」
というものです。
このブログはお金のプロである目黒FPが、「お金」というたいへん重要なテーマを皆さんと一緒に考えていくために、
- 使う
- 貯める
- ふやす
- 守る
- 学ぶ
- 専門家
というサブテーマで分類しつつ、常に最新の情勢や情報をアップデートしながら連載を続けてまいります。
読者の皆さんが、皆さんそれぞれの幸せな人生に必要なお金に生涯困ることがないよう、お役立ていただければ最高です。
お金は使うもの
「お金は大切よ!」
そう言いながら、お金を使わないで貯め込んでいる人もいるようです。
お金より大切なものがないなら、それもいいでしょう。しかし、お金より大切なものはあります。
たとえばあなたが人生をいかに生きるか、そして、あなたらしく生きてこそ得られる「幸せ」というものは、お金よりもずっと大切なものではないでしょうか。
お金とは、あなたの幸せな人生に必要なことに使って初めて価値があるものです。あなたが私の考えに同意してくださるならば、こう言い換えることができます。
「お金は、あなたが送りたい幸せな人生のために、使い切るだけあればいい」
お金は余ったとしても、墓場まで持っていくことはできません。また、お金の苦労はないけれど不幸せな人ってたくさんいます。
お金というものは、その人の生き方、その人が望む人生にとって必要なものにすぎず、その人の人生に必要にして十分なだけ、つまりちょうどあればそれで良いのです。
この金額を、私はその人の「ライフマネー」と呼んでいます。
この「ライフマネー」をはじめとして、私はお金に、目的や性質に応じて呼び名をつけています。この呼び名がブログの中で飛び交いますので、最初に一通りお伝えしておきます。
「ライスマネー」
ライフマネーは、大きく2つに分類できます。
1つは、基本生活費です。路頭に迷うことなくちゃんと「メシを食っていく」ために使うお金なので、これを「ライスマネー」と名付けます。
「ライクマネー」
もう1つは、あなたの望む人生を構成する趣味やライフワークなど、あなたの人生に欠かせない、本当に好き(like)なことに使うお金です。なので、これを「ライクマネー」と呼びます。このライクマネーには、さまざまな目的で使うお金が含まれています。
「愛すマネー」
あなたの人生を彩る趣味やライフスタイルのために使うお金もそうですが、家族がいらっしゃる方なら、愛するかけがえのない家族の幸せのために必要なお金もあるでしょう。子供の教育資金をはじめ、愛ゆえに使うこのお金を「愛すマネー」と名付けます。
「ナイスライフマネー」
そして、あなたが望む老後を幸せに生き切るための資金もライクマネーの中に含まれるのですが、「老後資金というとネガティブに感じる方もいらっしゃるようなので、これは「ナイスライフマネー」と呼びましょう。
このように、さまざまなことにお金は必要ですが、「ライフマネー=ライスマネー+ライクマネー」であり、あなたが送りたい人生イメージをもとにライフマネーの総額をきちんと算出して足していけば、それがあなたの人生を全うするに必要なお金の総額、つまりライフマネーとして明確になるのです。
そしてそのお金は、あなたの望む人生を全うするための様々な機会に適宜使って、最期に天に召される時には使い切っていればいいのです。
あなたの「ゴール」はどこですか?
冒頭の難題は、
「一生、お金に困らないで、充実した人生をまっとうしたいが、そのために必要なお金っていったいどのぐらいあればいいのでしょう」でした。
算出してみましょう。
総額はいくらになりましたか?
人生100年時代です。
50歳の方でも、人生はまだ折り返し点。人生はあと50年もあるわけです。ただ、お子さんたちの自立が近ければ教育費や住宅ローン残など、目処がつくお金も多いでしょうから、「ナイスライフマネー=老後資金」を中心にライフマネーの算出は比較的しやすいと思います。70歳時点で4000万円あれば、など具体的で現実的な数字が出てくるかもしれません。
逆に25歳独身の方なら、これから70年以上にわたって様々なライフイベントが目白押し。家庭を持つのかどうか、住まいはどうするか。仕事だって変わっていくかもしれませんから、ライフマネーの算出は一筋縄ではいきません。大いなる夢を抱き、そのためには少なくとも5億か10億は必要だな、なんて総額としてかなり金額の幅があるかもしれませんね。
いずれにしても、あなたの年齢に関わらずブログ読者の方に最初にぜひ行っていただきたいのは、ライフマネーの総額の算出、すなわち資産面での「ゴール」設定です。
ところで、あなたはいま何らかの形で投資をなさっておられるでしょうか?
もしすでに始めておられるなら、「ゴール」を決めておられるでしょうか?
日本では、「投資」に二の足を踏む方もまだまだ多いですが、始める方もたいへん増えてきました。しかし、始めるにあたってゴール設定が無いまま、たとえば次のような気持ちで投資を始めてしまう人が、実はとても多いのです。
「何となく今、お金が浮いてるから」
「銀行に預けていても金利がゼロだから」
「とりあえず周りのみんながやりだしたから。」
こういう曖昧な理由や動機で、特に目的もなく、漠然と資産の運用をしていても、決して成功しません。
明確な目的もなく資産を運用することは、ゴールの見えない真っ暗な道を、あてどなく進むようなものです。
そんな「ゴールなき資産運用」で失敗するあるあるなパターンは、ちょっと自分が思ったことと違うことがあると、些細なことですぐにやめてしまうことです。また、色んなニュースや情報に惑わされて、怖くなって合理的な判断ができなくなり、判断を大きく誤ってしまうこともよくあることです。
投資のゴール(目的)をしっかり決め、ゴールベース・アプローチの考え方で資産形成に向き合っていれば、判断ミスのリスクは避けられます。
ゴールが決まっていて、そこに向かう強い決意があれば、途中で「〇〇ショック」とか「〇〇バブルの崩壊」などと言った大ごとが起こった時も、感情は動いたとしても決して流されることなく、本質を見つめ冷静に考えて、間違った判断をしないということに繋がることでしょう。
「ゴール」と「現在地」とのギャップ
ライフマネーの総額すなわちゴールを明確にしたら、今度は「現在地」すなわち今あるお金(預貯金)や収入レベル、そして家計の内容をしっかり把握する必要があります。
ゴールと現在地にはおそらく大きな開きがあることでしょうが、現在地からゴール設定までの年月でこのギャップを埋めていく適確な計画を立て、コツコツと計画通りに実行していくことができれば、険しく遠い道のりであってもなんとかゴールにたどり着くことができるのです。
「現在地」を把握する際、認識しておきたい重要なことが2つあります。
1つは、今あるお金(預貯金)や収入レベルはにわかに変えることができないということです。
もう1つは、「現在地」の中身が「あるべき姿」でない場合、早急に「あるべき姿」に近づけることは誰でも可能であるということです。
現在地において絶対的なものは基本収入です。
収入から税金が引かれて、手取りがいくらあるか。
ではこの「手取り」を、あなたが今どう使っているかをチェックしましょう。
まず「基本生活費(ライスマネー)」は、手取り月収の6割程度に収まっていることが理想です。
食費、家賃、光熱水道費、など、生活をする上で必ずかかるお金があります。この基本生活費にかけるお金は手取り月収の6割程度と考えるのです。
そしてあなたの家計が、「基本生活費(ライスマネー)」・「予備費・預金(日常必要なライクマネー)」・「貯金および投資(将来必要なライクマネーの形成)」の大きく3項目で構成されている場合、それぞれの比率が6:2:2であれば、それはすでに理想的な配分にあると私は考えています。
もしあなたが目指すライフマネーの総額というゴールが、現在地から途方もなく離れたところにある場合、そこに辿り着くのは容易ではないと言う点で、高い山の頂上を目指すことに例えてみましょう。
登頂が難しいとされる山々の登頂に挑むとき、登攀不可能なルートからの登頂は絶対にあり得ません。
登頂までに選択すべき、登頂すなわちゴールできる確率の高い、とるべきルートが必ずあります。
そして、その山への登頂の難易度が高ければ高いほどそのルートは限られ、そのルートを進む途中で道を間違ったり知らない道に迷い込むことは、たちまち「死」に直結してしまいます。
だから、一流の登山家は、緻密な計画を練り、自分の限界を知った上で、絶対に計画したルートとペースとを崩すことなく登頂を目指すのです。
高い山への登頂を目指すことと、かなり困難であっても決して不可能ではない計画を立ててライフマネーの総額というゴールを目指す「投資」「資産運用」とは、よく似ています。
高い山への登頂を目指すことと、かなり困難であっても決して不可能ではない計画を立ててライフマネーの総額というゴールを目指す「投資」「資産運用」とは、よく似ています。
ゴールベースアプローチの実行
ゴールすなわち目的と目標を明確にしてお金を増やしていくことを「ゴールベースアプローチ」と呼びます。
まず、あなたが老後資金として必要な具体的金額、若い方なら今後の様々なライフイベントを頭に描きながら、何歳で何にいくら使うのか、そのシミュレーションをどんどん足していって、ライフマネーの総額をイメージしてください。
そして、次に、老後を迎えるまでの期間を把握しましょう。
現在40歳の人が、100年の人生のゴールまでは60年。しかし70歳までには資産のゴールに達していたい場合には、あと30年が資産運用に残された期間(時間)ということになります。
このようにして、仮に「70歳時に1億円」というゴールの場合に、あなたの現在の年齢からそれはあと10年後なのか、20年後なのか、若い方なら40年もあるのか、資産運用に残されている期間が決まります。そして、その期間を、まずは現状の生活を続けた場合、どのような資産運用をしていけばゴールに到達できるか、イメージした金額を老後の資金を確保できるのかということを考えるのです。
ゴールが定まっていなければ、どうすれば良いのか、何が適切なのかもわからず、ゴールへの到達方法を正しく絞り込むことができません。
たとえ期間が10年しかなくても、ゴールさえ短くても不可能ということはありません。もちろん、ゴールへのアプローチの仕方は大きく変わります。月々積み立てる金額も変わりますし、金融商品も債券より利回りの良い株がいいのかなど、求める運用利回りも変わってきます。無理があるなら、生活費を見直したり、積立金額など投資計画を修正していけばなんとかなります。
とにかく、最初にゴール設定ありき。
ゴール設定なくして、ゴールインはありません。