アメリカでお金を使って思うこと

アメリカ人は、学校で必ず「お金の使い方」について習うそうです。
子どもの頃、お金はどちらかというと使わない方が美徳と教えられた気がする我々日本人からすれば、「お金の使い方」という教育はとても斬新に聞こえます。
実際、アンドリュー・O・スミスという人が書いてベストセラーとなった「アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書」には、「貯金」は「支出」に含めて考えるという考え方が示されています。
え?貯金も、支出のうちってどういうこと?
我々は、「貯金」がなぜ「支出」になるのかと、不思議に思いますよね。
この本ではその理由を以下のように示してあります。
「貯金も他の支出と同じように、必要なお金をあらかじめ割り当てておいたほうが無理なく貯めることができます。最も重要なことは、予算を立てることであり、その際には、支出のほうに『貯金』と『緊急事態』というふたつの項目を入れるのです。
前回の「使う−2」のブログでは、外食も保険もともにお金を使う対象であるということを書きましたが、今回のブログでは、「pay yourself first(まず自分のためにお金を使う)」という考え方について考えてみたいと思います。

pay yourself first(まず自分のためにお金を使う)

私は、しばしばアメリカに渡って、お金に関する勉強をしています。
もっとも多いのは、MDRTという組織の一員としての活動や研修を通じて学ぶ機会です。

MDRT とはMillion Dollar Round Tableの略で、1927年にアメリカで発足した、卓越した生命保険・金融プロフェッショナルの世界組織です。
生命保険・金融サービス専門職の毎年トップクラスのメンバーで構成され、そのメンバーは相互研鑽と社会貢献を活動の柱とし、ホール・パーソン(バランスのとれた人格を志向すること)を目指しています。

BOSS

MDRT

私が目黒FPとしてお金のプロであり続けるということはまさに生き馬の眼を射抜くことの連続であり、いくら勉強してもそれで良いということはありません
だからこそ、私はその一員として、特に金融先進国であるアメリカに向けてアンテナを張り、しばしば現地に足を運んでいるのです。

もちろん、そのためにはお金が必要です。
実際かなりの金額を、そのために使っています。先日も、MDRTのイベントに参加するためにニューヨークやボストンに行ってきたのですが、
そのことによって、他にも使ったお金がたくさんあります。

一風堂のラーメンは1杯2,600円なり!

特に食事には、たくさんのお金を使いました。
アメリカにいようがどこにいようが、お腹は減ります。食事を我慢することはありません。

滞在中のある日、きっとみなさんもご存知でしょう「大戸屋」の看板が目にとまり、吸い込まれるように入りました。
どうしてもトンカツ定食を食べたくなったのです。
ビールも一杯頼みました。
さて、いくらだったでしょうか?
トンカツ定食が23ドル、ビールが17ドル、合わせてなんと50ドルです。

大戸屋メニュー

別のある日には一風堂ラーメンの看板が目にとまり、また吸い込まれるように店内へ。
高いことは覚悟しつつ、ラーメンに餃子1人前をつけ、ビール1本を飲みました。
ラーメン1杯で20ドル以上とられ、ビール17ドル、餃子が15ドル、チップや税金など合わせて60ドルを払いました。
その日は一ドル130円だったので、8,000円です。
一人ラーメン屋に入って、8,000円払うことはまあないと思います。

一風堂

ボストンに行った時には、JFKことケネディ大統領も通っていたという有名なクラムチャウダーの老舗に行きました。

そこで食べたのはクラムチャウダーとハンバーガー、ドラフトビール1杯。それだけです。
ユニオンオイスターハウスという、かねてより懇意にしていた店ですので、いわゆる「ボラれる」心配もありません。しかし、現実は厳しかったです。
チップや税金を合わせて支払ったお金は70ドル、およそ9,000円の出費となりました。
クラムチャウダーが21ドル、ハンバーガーが19ドルですから、これだけで5,000円以上なわけですから、もうびっくりです。

ビール

ハンバーガーと貿易収支

一個2,500ほどもするがあまり美味しくないハンバーガーを頬張りながら私は色々と考えました。
実感するのは円安ドル高なのですが、円とドルの金利差や、日本の貿易赤字についても考えざるを得ません。

たとえば国家間の取引には3つのサービス収支というものがあって、1つ目の旅行収支はインバウンドが来ているので日本は黒字ですが、2つ目の物流収支、3つ目のその他サービス収支が日本の課題になっています。
特にアップルへの課金とか、ITサービスのさまざまなサブスクなどはアメリカが日本に対して圧勝していますので、こうしたその他サービス収支について、日本は大赤字なのです。
経常収支という観点で日本の赤字はひどくなる一方なのですが将来為替どうなるかをなど短期長期でとらえる時、日本の赤字状況はしばらく続くのだろうと暗い気持ちになりました。

為替次第で、ビールは一杯2,000円に!

アメリカでは一杯2,000円以上もするビールを飲まなくてはならないように、為替の変動は、私たち日本人の普段の生活にも大きな影響を及ぼしています。

為替とは、異なる国の通貨同士の交換レートのことを言います。
つまり、ある国の通貨を別の国の通貨に交換する際に必要なレートを表現するもので、例えば、「1米ドルが何円に相当するか?」というのが為替レートとなります。

為替レートは、経済活動のみならず、観光や国際貿易など、様々な場面で利用されます。
また、中央銀行は為替レートを操作することで、国の経済政策に影響を与えることがあります。
例えば、自国通貨を売って外国通貨を買うことで、為替レートを下げ、輸出を刺激することができます。日本の中央銀行である日銀が、あまりの円安が進む中で介入をおこなったのは記憶に新しいところです。

為替レートの変動は、通貨の価値が変動することで、輸出入に大きな影響を与えます。
例えば、自国通貨が高くなると、自国の輸出品が高くなり、海外での需要が減少することがあります。逆に、自国通貨が安くなると、自国の輸出品が安くなり、海外での需要が増加することがあります。

ですから、今回起こっている円安で、私たちの生活は大きく影響を受けているのです。
海外メーカーのパソコンなどの製品価格は大きく上がっています。
生活に欠かせないパンやパスタなども、小麦の海外からの仕入れ値が上がってしまうことで価格は上昇しています。
豆腐や納豆など日本古来の食料品でも、原料の大豆を輸入に頼っているため、大きな影響が出ています。食料自給率の低い日本では、円安になると輸入食料品の値上がりに直結してしまうのです。
他にも多くの品目で価格上昇が起こっています。
牛肉もそうです。日本における輸入牛肉の割合は、およそ6割にものぼります。
直近の円安振興により輸入牛肉が10%値上がりし、大手牛丼チェーン店各社は軒並み値上げに踏み切らざるを得ませんでした。
このようにして、円安イコール生活費の圧迫に繋がっているのです。

私の専門領域で言いますと、為替レートの変動は、(海外)投資にも大きな影響を与えます。
たとえば今、日経平均株価が最高値を更新していますが、これは海外投資家たちのお金が投入されている結果です。
このようにして海外に資産を持つ投資家は、通貨の価値が変動することで、利益や損失を被ることがあります。

私たち個人が為替の影響を受けることを最小限に抑えるための対策としては、資産防衛のために外貨を保有することが有効な手段となります。
次回以降のブログで触れたいと思っていますが、特に基軸通貨かつ貿易時に活用される「米ドル」を
私たち個人としても保有することは、リスク回避の重要な手段の1つであると私は考えています。

予算をしっかり立ててお金を使う

アメリカでは、予算を賢く立てていれば、そういった不意の出費にも十分に対応できるということを子どもたちに教えます。予算を決めることの利点は、もしものときに備えられるだけではなく、しっかりとした予算組があれば、そもそもそういった事態にはならないと教えるのです。

たしかにお金がいくら入ってきて、いくら使うかということを事前に把握しておけば、収入と支出のちょうどいいバランスを保つことができます。
そして収入と支出のバランスがとれていれば、借金をする必要もありません。
決めた予算を守っていれば、給料日前になってお金に困ることはないですし、家賃や水道光熱費が払えなくなることもないわけです。
堅実な予算を立て、予算内で生活する習慣を若いうちに確立できた人は、この先どんなことがあっても健全な財政を保つことができるであろうという利点を考えるとき、子どもたちに「お金の使い方」と「予算の大切さ」を教えることはとても大切に思えます。

「pay yourself first(まず自分のためにお金を使う)」。
少なくともこの考え方を持っている人は、お金を何のために何に使うか、「お金を使う」ということに対する考え方を自分でしっかり持っているのだと思います。
そして、冒頭に採り上げた「貯金は支出に含める」という考え方は、このブログの究極のテーマである「何にお金を使うか」への一つの答えなのかもしれません。

アメリカ