まだまだ多くの人が、投資についてなかなか踏み出せないでいるようです。
その理由をお聞きしてみますと、その理由は大きく3つあるようです。
1つ目:投資って価格が下がると損をするものでしょう。
だからなかなか踏み出せないんです。
2つ目:投資をするファンド(商品)の成績がどうなるかわからない。
そんな大事なことがわからないから、踏み出せないんです。
3つ目、始めるのには適したタイミングがあると思うんです。
でもそれがいつか、自分ではわからないから始めていません。
実はこの三つの理由は大きな誤解によるもので、投資の三大誤解と言われます。
今回のブログは、こうした大きな誤解を解いていただくためにわかりやすい譬え話から始めることにしましょう。
投資の成績=量✖️価格
あなたは今、普段利用なさっている近所のスーパーマーケットにいます。
あなたはそのスーパーマーケットの食料品売り場にいて、右手に籠を持っています。
そして左手には1万円札を握り締めています。
あなたが買いたいものはりんごです。
あなたは1万円握り締めて、いつものスーパーに、りんごを買いにきています。
そのりんごが、一個100円で売っています。
1万円で何個買えるでしょうか?
100個買えますね。
もちろん自分が食べるのにこんなにたくさん買う必要もないですし、保存できる期間も限られていて、置いておくと腐ったりしてしまうものですが、例え話なので、「このりんご」は食べるものではないし、腐るものでもないとしてください。
あなたは1万円で買えるだけ、つまり100個のりんごを何個もの籠に分けて入れ、買って帰りました。
あなたは翌月、また1万円を握り締めてりんごを買いに行きます。
すると今度はリンゴの値段がなんと50円に下がっていました。
ということは、今度は200個も買えます。
買う立場として、リンゴの値段が下がってれば嬉しいですか?
それとも嫌でしょうか?
嬉しいですよね。
リンゴの値段が半分に下がっていると、同じお金で2倍も買えるのですから。
あなたは得をした気分になって、りんごを200個買って帰りました。
そしてまた翌月、1万円を握り締めて買いに行きます。
すると今度は1個80円になっていました。先月より、少し値上がりしているのです。
1万円で買えるのは125個ですが、3ヶ月目も買って帰りました。
さてこの3ヶ月であなたは何個のりんごを買ったでしょうか。
1ヶ月目は100個買い、2ヶ月目は200個買い、そして3ヶ月目は125個買ったのです。
そうです、今あなたの家には、425個のりんごが在庫として積み上がっています。
あなたは目の前に積み上がったこの425個のリンゴを見て、
たった今買った価格1個80円で、全てのりんごを売却することにしました。
普通、買い戻してくれるスーパーはありませんが、
譬え話なので買い戻してくれるとすると、どういう計算になるでしょうか?
425個のりんごを最終価格(3ヶ月目の価格)である1個80円で売却するので、計算式は425✖️80になります。なのであなたは、すべてのりんごをその金額すなわち合計34,000円で売却することができました。
あなたは毎月10,000円ずつ3か月間りんごを買い続けて、
当初100円だったりんごが80円に値段が下がった時に売却したのですが、
買った金額合計30,000円に対して売却した金額は34,000円、4,000円も増えて戻ってきています。
このりんごの例え話から、投資というものの3つの本質を理解することができます。
1目の本質は途中リンゴの値段が下がったとき、あなたの心の中にはどんな感情があったでしょうか?
値段が下ったとき嬉しかったですか?嫌だったですか?
嬉しかったですよね?
リンゴの値段が下がるとたくさん買えるから嬉しいと思ったわけです。
投資というのはこれと同じ。つまりは、「ものの仕入れ作業」なのです。
ですから途中値段が下がるということは、安く仕入れることができて、実は嬉しいことなのです。
2つ目の本質は、100個300個425個と積み上がっていったことです。
つまり「仕入れた在庫はどんどん増えていく」ということです。
3つ目の本質は、投資は普遍的な公式で表すことができるということです。
最後売却する時には全ての在庫を最終の値段の価格で掛け算しますので公式として表すと、「投資の成績=量×価格」 というになります。
ドルコスト平均法
このように、値動きをするものをひたすら同じ金額で一括ではなく分割で買付ける手法のことを「ドルコスト平均法」といいます。定量ではなく定額がポイントです。
投資すなわちドルコスト平均法の考え方でお金を増やしていくということは、このりんごように、毎月毎月一定額で値動きのする同じものを長期間買い続けることで在庫を増やし、最終価格で売却するということなのです。
積立期間に価格が下がっても、その際には量をたくさん買えるというメリットがあります。
逆に価格が上がると、買った時よりも価格が上がっているので当然メリットがあります。
つまり、どちらでも良いということになります。
注意するべきことは1つです。
かつて経験したリーマンショックなど、価格が大きく下がった時に怖くなってやめてしまう(売却する)と損をする場合もあるということです。
株の売買というのは、売りたい人と買いたい人がいて初めて成立します。
株価が上下するということは、そこで売買が成立しているという事です。
株価が下落するということは、株を売りたい人の数が買いたい人の数よりも多いということ、つまりその株は人気がないという事です。
一方株価が上昇するということは、株を買いたい人の方が売りたい人の数よりも多いという事です。
つまりその株は人気があるという事なのです。
かつてリーマンショックの時、アメリカの株価は全体的に約50%大暴落しました。
50%に暴落したとはいえ、そこには株の売買が成立しているのです。
つまり、安くなったバーゲンセールの株をお得に買っている人と、一方で怖くなって株を底値に近い値段で売っている人がいたという事なのです。
価格が大きく下がった時はむしろ破格のバーゲンセールになりますので、長い目で見て買い足しする方が良いのです。
投資の際には、価格ばかりに目が行きがちです。
しかし投資は量(数)も重要です。
ドルコスト平均法の公式は、「投資の成績=量×価格」です。
この公式を理解できれば、投資商品価格の上がり下がりだけで一喜一憂することから解放されます。
お金に働いてもらってお金を増やす方法はいろいろありますが、長期で安定成長させるという観点では、その代表格は「ドルコスト平均法」という投資方法です。
ドルコスト平均法の魅力としては、下記の3つがあります。
①取得コストを抑えやすい(安いときに沢山買って、高いときは少し買う、これにより平均単価が下がる)
②価格変動リスクを低減できる
③安定して利益を出しやすい
こうした魅力を持った「ドルコスト平均法」をしっかり理解し、まず最も安全運転できる投資方法としての「積立投資」を強くお勧めします。
「長期」「分散」「積立」という基本
資産運用の基本は、「長期」「分散」「積立」であると言われています。
これらは3つとも、リスクを減らす効果がある投資法のことです。
資産運用を成功させる秘訣の1つは、この3つを組み合わせて活用することで、リスクを極力減らし、お金を効率よく増やすことであると言えます。
まず積立についてはりんごの譬え話からはじまって「ドルコスト平均法」の解説を通じて詳しく解説しましたので、次は長期、そして分散の2つについてお話ししましょう。
まず、「長期」についてです。
どれぐらいの期間を長期と考えるかについてはいろいろな考え方があるでしょうが、
私は少なくとも10年以上の運用期間を確保することを長期と考え、お勧めしています。
その理由は、ハイリスク・ハイリターンつまり期待利益は大きいがリスクも大きいと言われる株式投資であっても、10年を超える長期投資をすれば、価格変動リスクを軽減する効果がはっきりとあらわれるからです。
因みに、金融の世界での「リスク」というのは、価格の変動幅のことを言い、上下の値動きが大きいものをハイリスクといいます。つまり、ハイリスク・ハイリターン商品とは、上下の値動きは大きいが、大きなリターン(利益)を得ることができるリスクがもっとも大きいとされる株式投資でさえ、10年以上売却せずにすなわち長期間保有を続けると、リターンの振れ幅つまり金融的リスクが平均化されるのです。
10 年以上の長期投資をお勧めするもう一つの理由は、その間の配当金の回数が多いということです。
配当金をその都度使ってしまわずに再投資すれば、複利でお金の増え方を大きくすることができます。
では次に「分散」についてお話します。
すべての金融商品の価格、つまり相場は、政治、経済、社会情勢など、さまざまな事情とその変化に左右されます。
長い期間の運用をしていると、かつてのリーマンショックのように
大きな経済危機で株価が暴落するような事態が起こらないとは限りません。
もちろんそうした大きな波さえも冷静にやり過ごすだけの長期の保有をすれば良いわけですが、そこで発生しうる損失を最小限に抑えるのに有効な投資方法もあります。
それが「分散投資」なのです。
投資の世界には「1つのカゴに卵を盛るな」という格言があります。
卵をすべて1つのカゴに入れてしまうと、そのカゴを落としてしまった場合どうなるでしょうか?
全部の卵が割れて台無しになってしまいます。
しかし卵を「分散」して、つまり少しずつ複数のカゴに分けて入れておけば、1つのカゴを落としてしまうというアクシデントが起きても、
他のカゴに入れた卵は守られるというわけです。
つまり、1つの投資先に資金を集中させると大きな損失を出す可能性があるが、投資先をいくつかに分散させていれば、資産の全滅もしくは大きな損失が防げるということです。
この「分散」にも3つの分散があります。
1つは「資産の分散」、2つ目は「地域の分散」、そして3つ目が「時間の分散」です。
資産の分散は、特徴が異なる複数の資産を組み合わせて保有することです。
分散した資産はそれぞれが異なる値動きをしますから、資産を分散することは、価格変動リスクを調整するという効果を生みます。
地域の分散とは、複数の国や地域の株や再建などを組み合わせて保有することです。
たとえある地域の経済状況が悪化したとしても、良好な経済状況にある国や地域の株や債券がカバーして、リスクを軽減するという効果が生まれます。
時間の分散は、投資する時期を複数回に分けること。
そして、長期にわたって少額ずつの投資を続けることです。
つまり長期・積立投資がこれにあたります。
価格変動を平均化するという効果を利用する投資法なのです。
「長期」、「分散」、「積立」の究極的見本
長期、積立、分散という運用方法について、とても参考になる事例があります。
まさか運用して元本を減らすなどということなど絶対に許されない、私たちの年金の一部を管理・運用している「GPIF」における運用方法です。
GPIFとは、厚生労働省から委託されて、公的年金の一部を管理・運用している組織です。
正式名称は年金積立金管理運用独立行政法人と言い、「Government Pension Investment Fund」の略称でGPIFと呼ばれています。GPIFは「市場のクジラ」と呼ばれており、約290兆円を運用する世界最大級の機関投資家でもあります。
念のためにですが、GPIFは「年金」と聞いてイメージする日本年金機構とは違います。
あくまで厚生労働省の委託を受けて公的年金の一部を管理・運用している組織です。
ご存知のように公的年金は「世代間扶養」という考えのもと成り立っています。
世代間扶養とは現役世代の納める保険料をもとに、高齢世代の年金を支給する「世代間の支え合い」のことです。
しかし少子高齢化がどんどん進む日本の社会では、将来にわたって現役世代が高齢世代に対して減っていくことが確実なのです。その少子高齢化に歯止めをかけたとしても、バランスを取り戻すのには相当の時間を要します。ですから今、年金を運用によって増やすことはとても大切なことになっているのです。
しかし年金の運用は、間違っても減らすことはできません。
ですから究極的とも言える長期・分散投資を実施して資産運用され、リスクを最小限に抑えながらも年率3%の運用成果を出しているのです。
このGPIFでモデルポートフォリオとされるのが、下記のグラフです。
この運用配分から、GRIFは定期的な見直しを行いながら、外国株式、国内株式、外国債券、国内債券の4つに対して均等に分散投資をおこなっていることがわかります。
年金という絶対減らしてはいけないお金だからこそ、このようにより安全な配分で運用して、それでも3%もの運用益を得ているのです。
この実例から、個人の資産運用においても円預金だけでなく外貨や株式を保有することの意味があることが見て取れるでしょう。
また、このGRIFの資産配分は、自分の資産を間違っても減らしたくない人にとっては大いに参考になるのではないでしょうか。
投資の方法は千差万別であり、もちろん一人ひとりにベストな投資は異なります。
それを分かった上で、あくまでもひとつの参考にしていただきたく、今回は積立、長期、分散という投資の方法をうまく組み合わせて運用手段の使い分けることについてお話ししてきました。
参考になりましたら、幸いです。