保険も人生のために「使うお金」

我が国の、少子高齢化の問題は深刻です。
経済的な理由、価値観の多様化等々、多岐にわたる原因の分析や歯止めをかけるための対策についての議論については日頃よく耳にされていることでしょう。
では、この問題に少し関連することとして2040年には日本の人口の半分ほどが独身者で占められ、
全世帯の4割が一人暮らしになる見通しであるということはご存知でしょうか。
結婚しない人たちだけでなく、離別・死別も含めて独身比率が上昇しているのです。

そこで今回、目黒FPMは配偶者の有無と寿命との関係について調べてみました。
高齢化については2020年時点での日本人の平均寿命は男性82歳、女性は88歳ということで、6年もの男女差があることはご存知のことと思います。
このたびそこをもう少し掘り下げて、その方がお亡くなりになったときその方には配偶者がいらっしゃったか、
それともその配偶者と死別しておられたか、あるいは離婚していたか、それとも生涯未婚であったか。
それぞれついて生じていた寿命の差について私が感じたこと、同時に改めて感じた保険の役割について書きたいと思います。

男性は未婚、女性は配偶者ありが“最も短命”

男女ともに、最も長生きだったのは「配偶者と死別」していた人たちでした。
男女ともに共通しているのはこの傾向だけで、あとは男女差が顕著です。
男性の場合、最も早く亡くなっているのが「未婚の人(平均約66歳)」で、次が「離婚している人(約72歳)」。
そして「配偶者のいる人(約80歳)」「配偶者と死別した人(約86歳)」と続きます。

女性の場合は、「配偶者がいる人(約78歳)」が最も早く亡くなっていて、次が「離婚している人(約81歳)」「未婚の人(約82歳)」。
最も長生きなのが「配偶者と死別した人(約92歳)」となります。

つまり、男性は未婚、女性は配偶者ありが“最も短命”ということです。
この結果に、目黒FPMは少なからず衝撃を受けました。

外食に偏ってお金を使うことと寿命の関係

一人暮らしの男性は糖尿病、高血圧、心疾患で亡くなるケースが多いようです。
これらの病気はいずれも生活習慣に起因するものとされています。
つまり、一人暮らしの男性は、健康に気を使って自炊で栄養のコントロールをしたりこまめに運動をしている人は少なく、ほとんどが外食主体の食生活を続けているのだと想像できます。

私自身の独身生活を振り返っても、毎日仕事に追われ、夜は飲みながらの外食でした。
おまけに締めにはラーメンがついてきますから、もしこの生活が現在まで続いていたなら、私もおそらく糖尿病、高血圧、心疾患を患っていたであろうと思うのです。

結婚後は食生活が変わりましたが、奥さんがいる男性の方は奥様の食事管理のおかげで寿命が伸びる傾向があるのかな、と私自身は思います。

女性は一人で生きていくことに適応性があるのか

男性については自分自身の経験からも納得できましたが、驚いたのは女性についての結果です。
なんと「配偶者がいる人(約78歳)」が最も早く亡くなっていて、次が「離婚している人(約81歳)」。それよりも長生きなのが、「未婚の人(約82歳)」で、最も長生きなのが「配偶者と死別した人(約92歳)」という結果には、正直驚きました。
女性の生き方に詳しい専門家によると、「老後は夫が亡くなってからのほうが幸せを感じる人が多い傾向がある」のだとか。
また、未婚の男性がわずか66歳ほどで亡くなっているのに対して、未婚の女性は82歳まで生きるということも驚きでした。そこには16年もの寿命差があるのです。
女性は男性よりも、一人で生きていくことに耐性と適応性が強いのでしょうか?

その人の人生によって大きく違う保険の役割

そんなことを考えていますと、保険の役割とは何かについて、改めて見つめてみることになりました。
今回、少子高齢化という問題を少し掘り下げて、配偶者の有無と寿命との関係について考えてみたわけですが、私としては大切なことをあらためて心に刻むことができました。

その人にとって真に必要な保険とは何かというものがどんどん多様化しているということです。

一般論ではなく、たとえばその人にとっての大切な保険を見逃してはいないか?
せっかく保険料を払っているのに、その人が必要で付帯させることができる大切な契約が抜けてはいないか?

常にすべてのお客様について保険の最適化についてアップデートを心がけていますが、そうした観点で、念には念を入れて見直しをしてみました。
そしてこの機会に、改めて目黒FPMが感じた保険を見直すことの大切さを共有しておきたいと思います。

保険の効用を自分にとって最適化することが大切

そもそも保険というものは、思いがけない病気やケガ、事故や災害等で急に大きなお金が必要になった時のために、毎月(毎年)保険料を支払うことによって、急にかかる大きなコストを日頃から平準化させることにあります。
ですからYouTubeや書籍の中で、「保険は最低限で」とか「〇〇保険は不要」等と言っている人が少なからず存在しますが、それは無責任な発言であり、彼らの主張の根拠である“損か得か”だけで判断して不要と言い切るのはとても危険なことだというのが私の考えです。
もちろん、ある程度お金が貯まって、急な出費(リスク)への資金手当てが完了してしまったとしたら、保険の加入は不要と判断してもよい場合はあります。

そういう意味でも、保険の見直しは、保険の効用を自分にとって最適化するために、絶対にしなければならないことです。
そして自分にとっての最適化を考える際に大切なことは、あなたの生涯必要な保障(補償)と一定期間必要な保障(補償)に分類して考えることです。
たとえば一定期間必要な保障(補償)というものを考えていくと、保険を見直す必要があるタイミングが必ずあるということにすぐにお気づきになるでしょう。

その典型が、今回このブログで考えているように、配偶者の有無をはじめご自身の家族構成が変化した場合です。結婚や出産、子供の独立・成長、あるいは離婚などによって必要な保障(補償)内容が変化しますから、そのタイミングでご自身にとって必要な保険を見直す必要があるのです。

また、収入が増えたり減ったりした場合にも、保険を見直す必要があるはずです。
収入が増えた場合は、将来の生活水準が高くなるため保障内容の見直しや年金などの積立額を増加させることを必要に応じてすればよいでしょう。
逆に収入が減った場合は、保険料の負担が大きくなるため、必要な保障内容を見直す必要が出てきます。

多くの人に共通する「貯蓄」「病気」という観点

配偶者の有無などに関係なく、多くの方に必要なものが「貯蓄」です。
保険にも、貯蓄型の保険がたくさんあります。
終身保険、養老保険、変額保険、外貨建て保険に分かれます。
「保険を活用した資産形成は効率が悪い」、「資産形成と保障は分けて考えるべき」などと言い切る人が結構多くいらっしゃいますが、必ずしもそうとは言えません。
そういう方は、保険の特性である保障があるからというところばかりに目が行って、「保険料免除特約」の存在を見落としておられるのかもしれません。

「保険料免除特約」とは、特定の病気になった際、以降の保険料が免除されるという特約です。
この特約の意味するところは、つまり、契約者が病気になった後は、保険会社が代わりに積立をしてくれるというものです。

確かに、保険で積み立てをすると保険料の一部は支払準備金として保険料から差っ引かれ、外貨預金や投資信託に比べて、お金が増える効率は悪くなります。
たとえばNISA制度を使った投資信託の運用の方が、貯蓄型保険よりも順調にお金は増えていく可能性は高いと思われます。
しかし、それは「積み立てを予定通り続けていくこと」が前提になっています。
もし万が一重い病気で働けなくなり収入が減ったとしたら、積立ての継続が難しくなるかもしれません。
その点、保険料免除特約を付帯した貯蓄型の保険なら重い病気になって収入が減少しても保険会社が代わりに積立をしてくれます。
この特約を付帯した場合においては、貯蓄型保険による資産形成を行うメリットはあると言えます。

逆に「保険料免除特約」のついていない貯蓄型保険は、お勧めしません。
保険を使った貯蓄は、お金を増やすという観点ではどうしても効率が悪くなります。
それは、保険料の一部が保険部分に充てられるからで、だからお金は増えにくいのです。

保障も積立も両方必要ということならば、保険を使うのではなく、保障は掛捨型保険、積立はNISA等というふうに、分けた方が効率的です。
保険を使っての資産形成にこだわられるのなら、必ず「保険料免除特約」を付帯しましょう。
この特約を付けてはじめて貯蓄型保険の意味があると思います。

共通する「年金」の心配と、保険の考え方

配偶者の有無に関係なく、将来の年金もまた、多くの方が必要とされるものです。
ただ、個人年金保険はお勧めできません。
お勧めしない最大の理由は、支払保険料合計(積立金額合計)と受取金額合計(年金)の増え幅が非常に少ないということです。
つまり個人年金で準備しようとしても、実際にはお金は増えないということです。
むしろ今後の物価上昇を勘案すると、お金はかえって目減りしていくことになるでしょう。

個人年金保険は、かつて(平成6年頃まで)は5%前後の利率で運用されていました。
その時代なら、検討に値していました。
しかし今ではその利率は1%程度です。しかも保険の場合は経費がそこから引かれますので、実質的な利率は1%を確実に割込みます。

そもそも個人年金保険とは、老後の公的年金の上乗せとして生活資金の準備をするための私的年金です。なので、保険料支払期間中(積立期間中)に被保険者が死亡した場合は、払込保険料相当額が死亡保険金として戻ってくる仕組みになっています。
ただ一つ、個人年金保険料控除として所得から最大4万円の控除を受けることができるというメリットはあります。

現在この保険に入っておられる方に私が提案したいのが、つみたてNISAや累投型投資信託を毎月口座振替で積み立てるプラン設計への切り替えです。
累投型とは、投資信託で得た利益(分配金)を都度受取らずに再投資に回す仕組みです。
これによって複利の効果で増え幅は格段に大きくなります。
具体的な商品選択は今後のブログで書くこととしますが、私自身の過去の実績でみると、年率換算で3%~10%の利率でお金は増え続けました。
もう1つ、このプラン設計の利点としては、保険と違って毎月の支払(積立)方は自由であることです。

基本的なお金の流れはこうです。
毎月口座振替で積み立てしていきますが、たとえば今月は出費が重なり家計が苦しい、そんな時は支払をスキップすることができます。その逆もありで、賞与などで余裕があるときには支払額を上乗せすることも可能です。
こうした支払スキップができるようになった個人年金保険が最近になって出てきましたが、基本的にはまだ個人年金保険ではできないことと判断して良いでしょう。

つみたてNISAや累投型投資信託を毎月口座振替で積み立てるプランをご紹介したからには、切り替えの際の注意点についても触れておきましょう。
それは、積立期間が10年以上を目安として、それ以上積み立てるつもりがあるかどうかです。
つみたてNISA、累投型投資信託はあくまでも投資商品です。元本保証ではありません。
過去の目安として積立期間が10年以上の場合は、ほぼ元本割れはしていないことから、10年という積立期間を切り替えのメリットが出る1つの目安としてください。

ですから今すでに個人年金保険に加入していて、保険料支払満了が10年以上先ならば、今の個人年金保険を解約して切り換える価値は十分にあると言えます。その際、途中解約なので解約返戻金は支払保険料を下回りますが、その解約返戻金を一括投資で運用し、毎月の支払保険料同額をつみたて投資で運用すると、将来の受取額は大きく増加することが予想されます。
身近に金融のプロがいらっしゃれば、是非相談してみてください。

「生き方」は多様化し、刻々と変わっていく

ブログを書いていて一番心配になったのは、シニア未婚男性の健康です。
もちろん今後は、生涯独身であることもより普通のことになっていくのでしょうし、自炊に慣れていく人も増えるでしょう。
今すぐできることは、日々のちょっとした生活習慣の見直しです。
ぜひとも気をつけていただいて、健康な生活を続けていただきたいと願います。

保険もまた、絶えず進化を遂げています。
同じ保険でも補償内容が拡大する場合もあります。
同じ補償内容でも保険会社によって保険料が異なる場合もありますし、長年加入している保険の保障内容が時代に合わなくなる場合も多々あるでしょう。

だからこそ、リアルタイムに「その人」と接しているFPはその人の保険の最適化にとってきわめて重要な役割を果たしているのだと痛感しています。